自動車リサイクル法について

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自動車リサイクル法について
はじめに
一言でいえば、この法律は「廃車のルール」です。
この法律の正式な名前は「使用済み自動車の再資源化等に関する法律」といい、2002年7月5日に公布、2005年1月から完全施行されました。 この法律は私たちの業界に大きな影響を与えました、最大の変化は、使用済み自動車の解体を行う者は、 自動車解体業もしくは破砕業の許可を都道府県知事から 取得しなければならなったことです。また、解体される車を「使用済み自動車」と呼ぶようになったことです。 この言葉は、ヨーロッパで「廃車」を意味する 「End-of-Life Vehicles」(略称:ELV)という表現の日本語訳です。 このような背景から、現在では、「廃車」「使用済み自動車」「ELV」と3種類の言い方が使われています。 何十年も前から使われてきた 「廃車」という言い方が一番普及しているようですので、株式会社3RのHPでは「廃車」という言葉を使わせていただきます。
どうして「自動車リサイクル法」ができたのか?
自動車リサイクル法ができた理由は、大きく言って、二つの理由があります。一つは、欧州連合(EU)の自動車リサイクルに関する規制強化、 もう一つは「豊島(てしま)事件」です。
1980年代後半から、ヨーロッパでは、ドイツを中心に廃車の適正処理について議論が真剣に行われるようになりました。 1990年には欧州理事会決議により、 廃車はECレベルで処理すべき廃棄物であることが決議されました。廃車を破砕処理した後に発生するシュレッダーダストが国境を越えて、 別の国で埋立処分されていることがその発端でした。1990年代半ばには、ベンツやBMWは廃車リサイクルの研究を開始、新車の設計において リサイクルが念頭に置かれるようになってきました。 2000年には廃車の処理・リサイクル方針を定めたEU指令が発効しました。欧州で自動車を製造・販売する、 すべての事業者はこの指令を順守することを求められました。日本メーカーも例外ではありませんでした。
豊島事件とは、ある産業廃棄物処理業者が1970年代後半から1990年にかけて、瀬戸内海の豊島に50万トン以上の、廃車由来のシュレッダーダストを野焼きし、 不法埋立を続けた事件です。 ダイオオキシンを含む有害物が瀬戸内海に流れ出したのです。1500ccのエンジンが搭載されている小型乗用車1台が廃車されると、 約200kgのシュレッダーダストが発生します(シュレッダーダストの中身は、 主に、シート、バンパー、ガラスなど非金属素材から作られている部品類です。 各種各様のものが混じっているので分別が難しい)。50万トンのシュレッダーダストとは廃車約250万台分に相当します。 2008年度に日本全国で発生した廃車は358万台ですから、豊島に埋め立てられたシュレッダーダストがどれだけ凄まじい分量はお分かりいただけると思います。 なお、豊島に埋め立てられたシュレッダーダストは、 2002年から隣の直島に運ばれ、非鉄精錬メーカーの製錬所で適正処理が行われています。処理が完了するのは、 2016年と見込まれています。
この豊島事件をきっかけとして、1995年6月には、厚生省(当時)から、「シュレッダー処理される自動車及び電気機械器具の事前選別ガイドライン」が公布され、 廃車処理においては燃料やエンジンオイルなどの液類、 バッテリーを廃車から抜き取り、専門の産業廃棄物処理業者に処理を委託することが義務付けられました。 さらに、翌年4月からシュレッダーダストは管理型埋立場に埋め立てることが義務付けられました (「管理型埋立」とは地面を掘ってつくった埋立場に有害物の 溶出を防ぐためのビニルシートを敷き、そのシートの上に廃棄物を埋めることを意味します。以前は、「安定型」と言われる素掘りの穴に埋めていました)。 その後、1998年12月には、廃車の流通過程を1台ごと記録するためのマニフェスト(紙)が導入され、廃車処理に関する規制は徐々に強化され、2002年7月に 自動車リサイクル法が公布されたのです。
自動車リサイクル法」の内容
自動車リサイクル法の主旨は、ゴミを減らし、資源を出来る限り有効に使う循環型社会を作るために、 廃車のリサイクルを様々な関係者が役割分担をすることで 実現してゆくことです。 どのような関係者が何をするかをまとめた表は次の通りです。
廃車の所有者(自動車の最終所有者)
  • リサイクル料金を支払う
  • 自治体に登録された引取業者に廃車を引き渡す
引取業者 (通常は新車販売店、中古車販売店、または、整備工場)
  • 廃車の所有者から廃車を引き取る
  • フロン類回収業者または解体業者に廃車を引渡す
フロン類回収業者 (通常は解体業者が兼ねる)
  • フロン類を廃車から適正に回収する
  • 自動車メーカー・輸入業者に引き渡す
解体業者
  • 廃車ガラの破砕(プレス、せん断、シュレッディング)を基準に従い、適正に行う
  • シュレッダーダスト(廃車の破砕後に残る残渣)を自動車メーカー・輸入業者に引き渡す
自動車メーカー・輸入業者
  • 自身が製造または輸入した自動車が廃車になった場合、そのクルマから発生するフロン類・エアバッグ類・シュレッダーダストを引取り、適正に処分または再利用する
日本の廃車リサイクルシステムの最大の特徴は、廃車1台1台がその所有者からが破砕事業者まで、どのような流通経路を経て流通するか、電子マニフェストと呼ばれる ITシステムで管理されていることです。 2009年3月の時点で、引取業者として77,635事業者、フロン類回収業者として17,623事業者、解体事業者として6,689事業者、 破砕事業者として1,299事業者、合計103,246事業者が廃車リサイクル関連事業者として登録されています。 この関連事業者のうち、引取業者とフロン類回収業者は 自治体に登録、解体業者と破砕業者は自治体から許可を取得することが義務付けられています。
日本の廃車リサイクルシステムの特徴
この稿の「どうして自動車リサイクル法ができたか」のなかで、日本の廃車リサイクルシスム設計にはヨーロッパの影響が大きいことを述べました。
では、ヨーロッパと比べ、どこに特徴があるのかについて少しみていきたいと思います。結論を言えば、「拡大生産者責任」の適用と、一般ユーザーによる リサイクル料金前払い制度です。 日本の廃車リサイクルにおける「拡大生産者責任」とは、一言でいうと、廃車リサイクルの向上責任は 自動車メーカーが負っているという意味です。簡単に言えば、 生産した者がその製品の最後まで、つまり、使用済みとなり廃棄されるときには、 環境に害を及ぼさないよう、責任を果たしなさいという意味です。

そこで、廃車リサイクルにおける3つの処理困難物、 すなわち、

  • シュレッダーダスト・・・豊島事件の環境汚染源(Automobile Shredding Residue/略称ASR)
  • フロンガス・・・オゾン層を破壊する原因
  • エアバッグ・・・有害物質を含むが、無害化のあとは金属リサクルに有用
のリサイクルは自動車メーカーの責任で行うと定めたのです。この3品目以外のリサイクルは、既存の社会インフラを最大限活用して行うというのが、 自動車リサイクル法立法の主旨なのです。 廃車を適正に処理し、リサイクルするためには、一定のコストがかかります。そこで、自動車リサイクル法導入後は、 新車販売時に、新車購入者からリサイクル費用を徴収するようになりました。 このHPを読んでくださっている皆さまも、このようなリサイクルチケットに 見覚えがおありだと思います。
自動車リサイクル法制定過程では、新車販売時に製品価格に上乗せして徴収する「前払い方式」と、廃車するときに徴収する「後払い方式」のどちらを採用するか 議論があったようですが、 廃車の不法投棄を防ぐため、また、確実に徴収するため、前払い方式が採用されました。リサイクル料金は、 指定法人自動車リサイクル促進センターに預託され、同時に、 車台番号何番のクルマについていくらだったか、記録されます。そして、何年後かに廃車されると、 電子マニフェストを経由して、いつ誰がフロン類を回収したか、エアバッグを展開・無害化したか、 ASRを適正処理したか、報告され、処理した関係事業者に 処理費用が支払われるのです。 なお、廃車時のリサイクル料金は、自動車メーカーにより、モデル毎に設計情報に基づき、緻密に計算、定められています。

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